総義歯咬合床作製のポイント
上顎咬合床編

正中要素として考えられるものとして、口蓋小窩・正中口蓋縫合・切歯乳頭・上唇小帯があります。

しかし、切歯乳頭や上唇小帯のように、歯牙の植立位置に近い要素は咀嚼癖や欠損の状態の影響が大きく、信頼できる要素にはなり得ません。従って、歯牙の植立位置から遠い正中要素を選択し、その延長線を正中線としてとらえます。その方法として、印象採得時に口蓋部後方の正中線をマーキングペンシルで印記し印象面に再現します。その他、ハミュラーノッチロケーターを用いてハミュラーノッチを、「あっ」と発音させてバイブレーティングラインを口腔内に印記し、印象面に再現します。それによって、これらのランドマークは模型上に印記され、床後縁の設定の目安に口蓋小窩を利用して、咬合床作製の参考にします。

次に模型上でのランドマークの確認と基準線の記入に入ります。

1)有歯顎において、正中線に直交し、切歯乳頭の中央を通った線は、第一横口蓋すう壁遠心末端を通り、犬歯の尖頭を通る場合が多いです。無歯顎の場合、歯槽骨の吸収に伴って、切歯乳頭は前方に移動しますので、大体切歯乳頭後縁を通過する線上にこれらは位置します。そして第一横口蓋すう壁遠心末端より、9mmの所に犬歯唇面が来ます。

2)有歯顎において切歯乳頭中央から7mm〜10mmの所に上顎中切歯切縁が来る場合が多いです。しかし、無歯顎の場合、歯槽提の吸収により切歯乳頭は前上方に移動するため、切歯乳頭中央から7mm前方を上顎中切歯切縁の位置とします。

3)臼歯部の排列位置は残遺舌側歯肉縁を基準としますが、基本的に本来臼歯が植立していたであろうと思われる位置を想定し、線を引きます。そのメルクマールとして、ハミュラーノッチがありますが、これは歯槽骨の吸収度により、左右差が出てきますので、注意した方がよろしいでしょう。図.4・5・6参照

図.3

図.4
 

図.5

図.6

咬合床を口腔内に試適した際に、上顎の咬合床が落ちてきたり、下顎の咬合床が浮いてきたりする原因は次のものが考えられます。

一つは印象の不備で、もう一つは咬合床の不備です。この原因を一つに絞り込むためにも、咬合床は可能な限りきっちり作りましょう。

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