同じ月を思い出す・・・

青森から帰り、さくさくと仕事をばたばたこなし(笑)、事もあろうか少しだけスタッフを怒鳴り、、、(だめだよなぁ)やや血圧が上がり、飯を食い犬の散歩の時でした。空気はすでに秋の空気。ひんやりとした、つんとした、秋の空気です。西の空に月齢は8ぐらいの半月が浮かんでいます。雲が流れても、すぐに顔を出します。月のすぐ下には。今の季節ならたぶん木星でしょうか。マイナス2等星くらいの、半月に負けないくらいの明るさで光っています。ワシはてくてくと歩きます。今は空と街灯が明るいので、月の影は望めません。

1969年7月20日。ワシは小学4年生。夏休みに転校する予定。今の学校での最後の学期も終わろうとしていました。家の前のリンゴ畑の木の影から、今まさに月に着陸しようとしているアポロ11号を想像して月を凝視するワシです。そのときの月は逆の半月(月齢18)だったのを鮮明に覚えています。月に人類が初めて立つその瞬間の感激を想像したり、新しい学校への不安や期待がごちゃ混ぜになっていたり、小学4年生でもそんなことを考えて、真っ暗なリンゴ畑の中で一人月を見ていたはずなのです。家の明かりももちろん見えていて、開けっ放しの縁側から、こちらヒューストンの声がかすかに漏れ聞こえてくるのでした。着陸は翌21日の朝でしたから、その瞬間月は見えていませんし、小学生のワシは寝ています。しかし、前夜の深夜の興奮と月を今でも忘れることが出来ないのです。

それからワシは、ことある毎に月を見上げるようになりました。月がとても好き。しかし怖いことも時々。友人の家で遊びすぎ、リンゴ畑への道をひたすら走ります。空は満月でとても明るいのですが、自分の月の影が太陽の影とは違うことに気がつきます。月の影の吸い込まれるような黒は、子供のワシが走ると一緒に走ります。月の影の中には、この世界の表に出ることの出来ない魑魅魍魎が住んでいるに違いないと、そこから顔をのぞかせているに違いないと信じ、たとえようのない恐怖を引きずりながら、家の明かりを目指したのでした。

今日の月はくっきりと周りが透き通っています。てくてくと犬夜道、そんな40年以上も前のことを、鮮明に思い出したのでした。

Posted: 火 - 10月 27, 2009 at 11:29 午後        




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