そのCT撮影は本当に必要か


いつもワシが考えていることを代弁してくれた

業界話です。
クイント7月号に緊急座談会と言う企画でCTの話が載っておりまして、すでに7年前から歯科用CTを導入している当院としてもちょっと気になるし、何より以前から「このCT必要ネェだろ」という投稿論文を、最近はたびたび見るようになり、あるいは、正しいレントゲン読影を習得するのが先でCTの必要性をもう少し検証するようにと、常々研修医にも言っている手前、こう言う偉そうな先生方のご意見を是非とも聞きたいと思っていたところでした。

座談会は放射線の専門家が二人、よく知る臨床家が二人ですよ。臨床家の意見は大方ワシと同じ意見だが、大学の専門家の意見は頂けない。CTの必要性を考えるにあたっての話なのだろうが、スクリーニングとしてのパノラマ撮影を「たいした成果はない」と言っている。こりゃ全くおかしい。この人は本当に臨床を知らないんだと驚くだけでなく、自分の経験ではなく全て他人の論文から構成される自分の意見という所に、酷く違和感を覚えるわけですよ。

何が言いたいかというと、こう言う偉い先生が、患者スクリーニングとしての初診時のパノラマを、「得られるモノはほとんど無い」と切り捨てることで、社会保障の中身が不妙に変わるだけでなく、例えばウチのように、ルーティンでスクリーニングパノラマ撮影をする医院は全否定されることになる。逆にスクリーニングとしてのCTは、全くあり得ないことは承知。当たり前だ。
ということでエライせんせい、良き聞きなさい!
初診時にパノラマをとる意味は、何処にどういうカリエスがあるかなどそんなことはおおざっぱでかまわない訳で、そのことが論文になるからオタク的歯牙のみ診療を後押しする。ワシらは、歯、歯槽骨の状態はもちろん、仮想咬合平面との解剖学的ずれ、骨格のシンメトリー、頸椎の空隙の大小の果てまで、それはそれは多岐にわたって観察するんですよ。一つのカリエスが此処まで大きくなった理由が、力とその制御不能になった一点からの崩壊だと仮定し、骨格の変形や傾きから来る物理的不整合の簡単な計算、果ては習慣までも含む社会性までそこから読み取って、何一つ無駄な情報はないんですよ。だから初診時のパノラマ撮影は物凄く重要なんです。
あなたはそれが出来ないのでしょうね。。得られるメリットは少ないというのが常識とか、何も分かっちゃいないのはあなた。

で、その上で、歯科用のCTに必要性の議論は成り立つわけですから、基本的にお話の展開に無理があったと感じています。ただ、無意味な確認のための臨床報告のための、症例のための症例作成の場で、「そりゃないんじゃないか」というCT撮影があることは残念なことですし、あるいはCT自体が診断のためではなく、医院の付加価値に成り下がっているのも事実です。医院のHPの宣伝の仕方で、いんちょうのCTに対する考え方が分かるというモノ。

なにかさ、この座談会でもそうだけど、尊敬する先輩までもが、目的と手段をはき違える議論に終始して残念だし、多くの気の利いた歯科医師がそのことに気がついてくれればと思ってます。CTは手段です。たったこれだけなんですよ。

目的も明確ではなく手段が目的になって行われる日常診療が、如何に多いかがよく分かるというモノ。ワシは絶対気をつけるよ(笑)。

Posted: 金 - 8月 12, 2011 at 04:19 午後        




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